皆様、初めまして。松下です。
原宿に店を出して早25年余りが経ちました。私も55歳を過ぎ、2人の女の子の父親になりました。長女は某ゲーム会社でCGデザイナーとして日々頑張っています。このホームページの製作と管理もしてくれています。(次女はまだ10歳の小学校4年生です。)このような仕事で家族が育てられるとは、思っても見なかったことです。全て、お客様のおかげと思っております。
この仕事は、信用こそ第一と、どなたもお分かりになられることでしょう。信頼いただけるには、技術だけではなく、皆様との友情をも大事にしていかねばなりません。もちろん、お客様のギターにも、お客様と同じだけの愛情をもって接しなければなりません。大事な自分の娘と同じ想いで、納得していただける品質で、お客様にお返ししなければ、と常々思っております。
私同様に、スタッフも同じ想いで、日々皆様のギターに接しております。私の右腕である竹内は、もう24年働いてくれています。塗装に関しては、早くから私を超える技術があり、無口で少し無愛想なところが欠点ではありますが、職人に良くありがちな…いえ、だからこそ腕が伸びるのでは、と思っております。もう、いつ独立しても十分にやっていけるのに、松下工房を思って、留まってくれています。本当に感謝しております。
そして、私と竹内を支えてくれている人物が2人居ます。松沢と川中です。彼等は、私達2人が動きやすいようにサポートしつつ、自分達の仕事もこなします。
松沢は、実家が雛人形の制作工房ということもあり、真に職人だなぁ!と思わせてくれる事が多々あります。彼のフレット交換の技術は、もう私を上回っています。私のような下り坂に居る老職人に比べ、若い力でドンドン上り調子みたいで…言葉優しい人柄はお客様指名度ナンバーワン。風邪で良く休み、お客様に御迷惑をお掛けすることも工房ナンバーワン。(これが私の悩みの種なのですが)
川中は関西、岸和田出身の24歳。単身上京、見習いから工房最速で一人前になりました。仕事面では全般バランス良くこなし、早い。会社を広い視野で見ることが出来、人事や後輩の育成など私の力になってくれています。年老いてくると、こういう存在が必要なんですね。東京で奥さんと出会い、今年(08)一児の父親になりました。子供への「無償の愛」を覚えることによって器が大きくなり、家庭にも仕事にも、今まで以上に愛情を注ぐことを望んでいます。
その次に一度辞めた後復帰した鈴木です。累積16年。竹内と同じ職人によくある「ことばベタ」ですが、電気配線やルーター(木工加工)は右に出るものがない程です。工房内での全ての動きを把握し、お客様の顔とギターを憶えることが得意です。
その他のスタッフのキャラは、次回にしまして。松下工房は、私松下だけでなく、私と、私以上にギターに愛情と技術を持った者とで構成されています。私を目当てにいらっしゃる方々も、最近ではもう一部のプロの方と、飛び込みの営業マンくらいで、25年前の松下工房ではなくなりました。
職人は、技術に必ず「得手」と「不得手」があります。1人の職人で1本のギターを最初から最後まで作業すると、その工程の中にもし不得手な作業が入っていれば、このギターは可哀相に1ランク、クオリティーが落ちたギターとしてお客様に渡す事になります。各工程に、得意とする職人を各箇所に使うことがクオリティーの安定と向上に繋がる最大の方法なのです。このやり方は、アニメ界では「手塚治虫方式」と呼ばれますが、他業界でも使われている成功法です。
「松下さんでなきゃ!」と指名して頂けるのは、非常に有難いのですが、「25年前から、私と私より技術のあるスタッフとでやっておりますので」と言い続け、ようやく、今ではその指名も少なくなって参りました。これは、私にとって大変嬉しいことです。何故なら、もし私がいつか逝ってしまって、それで皆様のギターのケアが私一代で終わったとしたら…それこそ最大の、信頼への裏切りになるはずですから。
私は毎朝、前日に入庫した修理品をチェックします。前日受けた担当者とお客様との間に、不適当や間違いがないかを必ずチェックします。後日、仕上がったギターも必ず、私のメガネにかなっているかチェックします。いずれは、このチェックも、私でなくても良くなる時が、近い将来に来るでしょう。もしかしたら竹内の方が、もっとチェックが厳しくて、もっとクオリティが上がり、お客様に喜ばれるかも…そう期待します。
17歳からこの仕事を覚え、38年が経ちました。その間、ギターのおかげでプロのミュージシャンやアマチュアのお客様と知り合い、私生活でも深いお付き合いをさせていただいております。時には自分の人生の方向までも変えられる程の大きな影響力のある出会いもあり、1本のギターが、友情の架け橋になりうることに感動と感謝を覚えます。この歳ですから、突然の不幸でのお別れも経験させられ、その方にはまだ何のお返しもできないまま終わった付き合いも少なくありません。だからこそ、せめて「一期一会、今の1本を悔いのない仕上げでお渡ししたい」と、最近は今まで以上に思えるようになってきました。
松下工房のスタッフは、ギターと、そのギターの仕上がり具合をお客様に褒めていただく事が大好きです。お客様への応対に「くちべた」な者もおりますし、コンピュータや機械ではなく生身の人間なので、風邪で体調をくずしたり、納得のいかない仕上がりで、やり直しをして納期を遅らせてしまうこともありますが、どうか、愛情と長い目を持って見てやっていただけないでしょうか。この25年、彼等が居なければやって来れなかったと思っております。勿論これからも彼等が必要ですし、大半のお客様も彼等を必要として頂いております。
私達、松下工房一同は、ギターを通じて皆様とより深く、永いおつきあいをさせて頂きたいと思っております。不景気で殺伐とした世の中、デジタルではないアナログな人間だからこそ、愛が生まれ、その愛があるからこそ、綺麗な音や良い音楽が生まれるのではないでしょうか。そう信じて、これからも30年、いや100年と、頑張って参りますので、どうか松下工房を末永く宜しくお願いします。
松下